最近、TikTok LIVEというものを知りました。 TikTokそのものは知っていましたが、ライブ配信の仕組みについてはほとんど知りませんでした。 TikTok LIVEとは、TikTok上で配信者(ライバー)がリアルタイムで配信を行い、視聴者がコメントやギフト(いわゆる投げ銭)を通じて交流できるサービスです。通常の動画投稿と比べて視聴者との距離が近く、雑談や歌、ゲーム配信などさまざまな配信が行われています。 ギフトには1コイン程度のものから数万コインするものまであり、視聴者が送ったギフトは、TikTokや事務所などの取り分を差し引いた後、ライバーの収入になります。 また、ライブ配信では、ライバー同士が対戦する「バトル」という機能もあり、視聴者が送ったギフトの合計点数で勝敗が決まります。応援するライバーを勝たせようと多くのギフトが飛び交うため、ライブ配信の中でも特に盛り上がる場面の一つとなっています。 最初は、 「そんな世界があるのか」 程度の興味でした。 ところが、しばらく見ているうちに、これは単なる娯楽ではなく、経営や人間心理を考える上で非常に興味深い世界だと感じるようになりました。 ライバーの方々は、ただ配信をしているわけではありません。
どのように見せれば魅力的に映るのか。 どのような話し方をすれば親しみを持ってもらえるのか。 どのようなリアクションをすれば喜んでもらえるのか。 どのような雰囲気を作れば人が集まり続けるのか。
画像加工や照明、表情、声のトーン、コメントへの反応、話すテンポなど、さまざまな工夫をされています。 そして、その結果としてファンが増え、ギフトが贈られ、収益につながっていきます。
私はこれを見ながら、 「お客様が求めている価値を提供し、その対価をいただく」という商売の原則そのものだと感じました。 これは営業にも通じると思います。 営業は商品説明をする仕事と思われがちですが、実際にはそれだけではありません。
この人から買いたい。 この人なら信頼できる。 この人は自分のことを理解してくれている。
そう思っていただけるかどうかが大きいのではないかと思います。
安心感なのか。 信頼感なのか。 価格なのか。 丁寧さなのか。 話しやすさなのか。
お客様によって求めているものは異なります。
TikTok LIVEの世界でも同じでした。
明るく場を盛り上げる人。 親しみやすい人。 癒しを与える人。 雑談が上手な人。 歌やダンスなど特技で魅せる人。
それぞれにファンがいます。
つまり、正解は一つではありません。 大切なのは、 「誰に対して、どのような価値を提供するのか」 なのだと思います。 ライバーの世界を見ながら、企業経営にも共通する部分があるように感じました。 どれほど優れた商品やサービスでも、お客様から必要とされなければ事業は続きません。 一方で、大企業でなくても、お客様から強く支持されている会社はたくさんあります。 結局のところ、企業も、営業も、ライバーも、本質的には 「相手が求める価値を提供できているか」 という点で共通しているように思います。 そして、私自身の行動にも興味を持ちました。 最初は、ほんの遊びのつもりでした。 ところが、ライバーがその場で反応してくれる。 名前を呼んでくれる。 感謝してくれる。 そうすると、また応援したくなる。 そして気づけば、さらにギフトを贈っている自分がいました。 冷静になって考えると不思議です。 実際に会ったことがあるわけでもありません。 手元に何かが残るわけでもありません。 それなのに、なぜギフトを贈りたくなるのだろう。 以前のメルマガでも取り上げましたが、行動経済学では、人は必ずしも合理的に行動するわけではないと言われています。 ノーベル経済学賞を受賞した心理学者の ダニエル・カーネマン は、人間には直感的・感情的に判断する「システム1」と、論理的・分析的に判断する「システム2」があると説明しています。 私が贈った最初の1コインも、「システム1」によるものだったのかもしれません。 しかし、その小さな行動がきっかけとなり、ライバーとのやり取りが生まれ、応援したいという気持ちが生まれ、さらにギフトを贈りたくなる。 後から振り返れば、 「なぜそこまでしたのだろう」 と思う部分もあります。 しかし、その体験を通じて感じたのは、人は思っている以上に感情で行動しているということです。 そしてTikTok LIVEは、その人間心理を非常にうまく仕組み化しているように感じます。 一度参加すると反応が返ってくる。 反応が返ってくると嬉しくなる。 嬉しくなるとまた参加したくなる。 その積み重ねによってコミュニティができ、経済圏が生まれているのです。 私はこの仕組みを見ながら、 「これはライブ配信だけの話ではない」 と感じました。 TikTok LIVEは、ファンがいて初めて成り立つビジネスです。 ライバーは、いかに多くのファンを集めるかだけでなく、いかに継続して応援してもらえる関係性を築くかが重要になります。 そして、その結果としてギフトが贈られ、収益につながっていきます。
お客様との関係づくり。 営業活動。 ファンづくり。 社員とのコミュニケーション。
形は違っても、人が動く原理は共通している部分があるように思います。 だからこそ、この仕組みに気づき、ここまで大きなビジネスモデルとして作り上げた人たちは本当にすごいと思いました。 今回、TikTok LIVEでの体験を通じて、経営や人間の心理について改めて考えさせられる機会となりました。 ちなみに、私のように「1コインだけ試してみよう」と思って始めると、思わぬ出費につながる可能性がありますので、ご利用の際は十分ご注意ください。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。(松田)

皆さんは、福本伸行氏が書いた漫画「賭博黙示録カイジ」をご存じでしょうか。

保証人になっていた借金を押しつけられた主人公伊藤開司が、
闇金業者・遠藤に誘われ違法賭博船エスポワール号に乗り込み、
命がけのじゃんけんゲームを生き抜くも、その後さらなる地獄——地下労働施設へと送り込まれていく物語です。


この漫画の面白い点は、次の4つのテーマを容赦なく描いていることです。
・人間の弱さ……楽な方向に流れ、言い訳を重ねる人間の本質を容赦なく描く
・極限の選択……追い詰められた時に人間の本当の姿が出る
・搾取構造……富める者が貧しい者を合法・非合法に搾取する社会構造への批判
・希望と絶望……勝利の直前に奈落に落とされるパターンが繰り返される

その地下労働施設で登場する敵役・大槻班長が発した言葉が、非常に深いのです。

「明日からがんばろう」という発想からは、どんな芽も吹きはしない! 
今日、今日だけ頑張るんだ。今日頑張った者、今日頑張り始めた者にのみ、明日が来るんだよ。


注目すべきは、この言葉が主人公ではなく「敵役」の口から発されるという点です。
勧善懲悪ではなく、「人間とはこういうものだ」という冷徹な視点——これがこの漫画の最大の魅力でもあります。


「明日から」という言葉の裏には、問題を先送りにしたいという心理があるのかもしれません。
今日向き合うと決めた瞬間、失敗や挫折のリスクも同時に引き受けることになる。
だから人は無意識に「明日」という逃げ場を用意してしまうのではないでしょうか。


「明日から」と言った瞬間、今日の自分は責任から解放される。
しかも未来の自分はすでにがんばっていることになっている。
脳内では達成感まで先取りできてしまう。
これほど都合のいい言葉はありません。


・ダイエットを始めようとしている人は、「月曜から」と言う
・読書習慣をつけたい人は、「来月から」と言う

そして月曜日になっても、来月になっても——また同じ言葉が出てくる。
走り始めないまま、スタートラインをひたすら後退させてしまっているのです。


面白いのは、大槻班長の言葉が「ずっとがんばる」ではなく「今日だけがんばる」という構造になっている点です。
これは精神論ではなく、ある種の戦略だと思います。


人間が「明日から」に逃げるのは、「ずっとがんばり続けること」への恐怖があるからではないでしょうか。
継続のプレッシャーが、最初の一歩を踏み出すことすら阻んでしまう。だから「今日だけ」でいいのです。


よく「継続は力なり」と言います。しかし継続できる人とそうでない人の差は、意志力でも才能でもないと私は思います。
差は、「今日始めた」という事実があるかどうかではないでしょうか。
一度でも「今日やった」という経験を持つ人は、「あの日できたなら、今日もできる」という小さな確信を手がかりにできる。
始めたことのない人間に、継続は訪れません。


今、皆さんが後回しにしていることはありませんか。

小さな「今日」の積み重ねが、いつか大きな明日になっていくのではないでしょうか。

今回もお読みいただきありがとうございました。

6月に入り、年度初めの慌ただしさが少し落ち着く時期になりました。
一方で、足元では資材価格の上昇や調達の遅れ、物流の不安定さなど、経営にじわじわと効いてくる変化が続いています。今回のイラン情勢を受けて、中小企業の資金繰りを支える制度にも動きが出てきています。
先日実施した「セーフティネット貸付セミナー」でも、この点を中心にお話しする機会がありましたので、その内容について触れたいと思います。

今回の大きな変更点は、日本政策金融公庫のセーフティネット貸付の考え方です。従来よりも、「資金繰りに著しい支障をきたすおそれがある」ことが重視されるようになり、売上減少という結果が出てからではなく、そうなりそうだという段階から申込みを検討しやすくなりました。

たとえば…
仕事の受注が思うように取れなくなってきた
資材の納入が遅れて工事開始の目途が立たない
納品や工事完了が後ろ倒しになって入金も遅れている

といった事象が起き始めているのであれば、資金繰りへの影響を見越して相談できる可能性があります。
今回のセーフティネット貸付では、従来の借入要件でよく見受けられた「売上減少要件」が設けられていません。そのため、「売上が落ちてからでないと申請できない」というジレンマは薄まり、資金繰りに著しい支障をきたすおそれがある段階で、申込みを検討しやすくなったと言えます。
(但し、本制度はあくまで「一時的な業況悪化があるものの、中長期的には回復・発展が見込まれる方」を対象としている点は押さえておきたいところです。)

ただし、ここでお伝えしたいのは、「申込みしやすくなったのだから、すぐ借りましょう」ということではありません。
制度が広がった今こそ、自社に本当に必要な対応かどうかを、落ち着いて考えることが重要です。資金調達は、早めに動くことが有効な場面もありますが、借りた資金は必ず返済していかなければなりません。入口が広がったことと、実際に利用すべきかどうかは、分けて考えたいところです。

また、イラン情勢を受けて埼玉県の制度融資にも特例が設けられています。
こうした情報に触れると、つい表面金利に目が向きがちですが、判断材料はそれだけではありません。
保証料の有無や負担感、申込みから実行までの期間、必要書類の整えやすさ、相談先の違い、既存借入との兼ね合いなど、実務上確認すべき点はいくつもあります。
日本政策金融公庫のセーフティネット貸付にも、埼玉県の制度融資にも、それぞれ特徴がありますので、単純に数字だけを比べるのではなく、自社の資金繰りの状況や今後の見通しに照らして見ていく必要があります。

その際、窓口申込の際にやはり欠かせないのは数字です。
「困っている」「先行きが不安だ」という感覚はもちろん大切ですが、それを前面に出すだけでは、資金繰りへの影響の大きさは十分に伝わりません。

受注がどの程度鈍ってきているのか…
資材の納入遅れによって工事開始や納品がどれだけ後ろ倒しになっているのか…
入金予定がどの程度ずれ込んでいるのか…
粗利率がどのくらい下がっているのか…
既存借入の返済負担が毎月いくらあるのか…

こうした状況を数字で示すことで、窓口側も「資金繰りに著しい支障をきたすおそれ」がどの程度あるのかを把握しやすくなります。
窓口相談を実りあるものにするためにも、感情を訴えるより、まずは数字で現状を説明できるよう準備しておくことが重要です。その整理ができてくると、申込みの可否だけでなく、今やるべき対応も見えやすくなります。

そして、最も大切なのは返済の出口まで考えることです。
コロナ禍での借入がいまも重荷になっている企業が少なくないことを見ても、借入は「通ったかどうか」で終わる話ではありません。新たに資金を入れるのであれば、その返済原資はどこから生まれるのか、返済期間中にどのように資金繰りを立て直していくのか、想定より売上が伸びなかった場合でも耐えられるのかまで、事前に見ておく必要があります。
制度を知ることは大切ですが、もっと大切なのは、その制度を使った後の経営を描けているかどうかだと思います。 

今回の制度変更は、「困ってから相談する」のではなく、「困りそうな兆しが見えた段階で検討できる」ようになった点に意味があります。
だからこそ、慌てて結論を出すのではなく、まずは現状を整理し、制度ごとの特徴を比べ、返済まで含めて判断することが大切です。
気になる兆しが出始めている方は、借入を前提にする必要はありませんので、まずは会計担当者と一緒に、自社の状況を数字で確認するところから始めてみてはいかがでしょうか。

今回もお読みいただき、ありがとうございました。
(柴沼)

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