年明け早々に運転免許証の更新手続きにて、30分×2回の運転者講習を受講する機会がありました。前回の更新(受講)から5年が経過しており、×2回ということからもお分かりかと思いますが数年前に軽微違反行為をしてしまったこと、そして新年ということもあり、初心に返る気持ちで講習に臨みました。
2020年6月に公布された改正道路交通法により「妨害運転罪」が創設されたことで、煽り運転に関する項目が講習の中にも追加されていましたが、煽り運転を含めた事故の事例報告や、人の交通心理に基づく要因分析は、私たちの仕事や経営にも大いに関係してくる問題だなあと感じながら聞いていました。

さて、自動車免許をお持ちの方にとってみれば今更かも知れませんが、交通事故の要因には「直接要因」と「背後要因」があると言われています。
交通事故の多くは、スピードの出し過ぎや急ハンドルといった、運転者の運転操作ミスなどの人的要因(過失)によるとされており、これらは「直接要因」と言われます。
しかし実際には、直接要因となった過失の背後に、認知・判断・操作といった運転動作のいずれかの段階において、運転者がミスを犯すに至った要因があるわけで、これを「背後要因」と言います。

車両構造や走行環境といった環境による場合もありますが、「急いでいた」「イライラしていた」という運転者の心理から生じるものもあり、さらに深堀りすれば「約束に遅れそうだった」「前の車がノロノロしていた」といったものから、さらにさらに掘れば「慢性的に過度なストレスがかかる職場環境にいる」とか「仕事が忙しくて常に寝不足状態である」といった原因があるかも知れません。

心理的ストレスから危険運転が発生しているのであれば、そのストレスを解消させることが必要になるわけです。

さらに言えば、先に挙げた煽り運転についても、「急な割り込みをされた」とか「前の車がノロノロ走っている」といった理由から発生する事が多いようですが、この「前の車」にも、割り込みやノロノロ運転の背後には「道に迷っていた」とか「初めて来る地域で慎重に運転していた」といった理由があるはずです。
他人の行動にも何かしらの背後要因があることを理解、想像できれば、煽り運転も発生しないはずです(言うは易く行うは難し、ですが…)。

自動車の運転だけでなく、私たちの仕事や経営においても同じことが言えますが、事故やミスの要因分析において、前提となる直接要因の認定が確実に行われることはもちろんですが、根本的な事故の要因となる背後要因を理解することが大切で、次のミスを防ぐことに繋がります。また、誰しもが多くの背後要因を受けて行動していることを想像し、相互理解しながら働くことで、組織の心理的安全性が高まり、ミスの少ない、質の高い仕事に繋がるのだと思います。

「1件の重大事故の裏には29件の軽微な事故と300件の怪我に至らない事故がある」と言われます(ハインリッヒの法則)。みなさんの会社や組織でも、重大事故が起こる前に、怪我に至らない事故(ヒヤリ・ハット)を共有し、その背後要因をよく話し合ってみると、経営課題解決のヒントが見つかるかも知れませんし、みなさんが安心して働ける職場環境の構築に繋がるかも知れません。

今回もお読みいただきありがとうございました。
(柴沼)

 

「自社の工程の中に本当の強みがある」

1) 工程の中に宝物(個性・強み)がある
私はここ3年ほど全商連さん発行の「全国商工新聞」で「発想の転換」というコーナーを書かせていただいています。
その取材のプロセスですが、大まかにいうと次の様な流れになります。
 a) (事前の取材先様の営業地域のある程度の知識は前工程として調べて訪問しますので)1時間ほど前に取材地域に到着し、徒歩で30分ほどその地域を歩き回る。
 b) 取材地(店舗だったり工場だったり、喫茶店だったりします)にて取材先様と合流。
 c) 天気や気温、地域性など見たもの等の話をします。

 d) 取材工程
 i) まずは取材先様(主には経営者の方となります)の朝起きてから会社着からの流れを退社迄お聞きします。または、出生地や幼少期、学生時代などのライフステージについて現在に至るまでざっくりお聞きする場合もあります。
 ii) ノートにそれらをざっくりフローとして書いていきます。
 iii) 「ここがちょっと面白そう」と思うところについて深堀りします。その際の聴き方ですが、「この工程で気をつけていることや、注意していること、こだわっていることは何ですか」というふうにおたずねします。
 iv) もちろん経営者様は「そこ」にもっとも力を入れていらっしゃるので、これでもか、というくらいに雄弁に語ってくれます。
 v) 取材時間には限りがあるので、ある程度見計らってまた大雑把な工程に戻ります。そして次に「こだわっている点」があればそれを同様にお聞きします。
 vi) そうすると、先のiii)のこだわりと、v)のこだわりの関連が観えてきます。

 e) 初稿
 i) 2時間ほどの取材でそれをすべて文字情報にしようとすると優に1万文字を超えますが、原稿の依頼文字数は1500文字しかありませんので、取材内容の6分の1くらいの文字数で取材先様が伝えたいことと読者が読みたいことを書ききるしかありませんのでどんどん削っていきます。
 ii) 削りすぎると意味が伝わらない場合がありますので、そこは慎重に削ります。

 f) チェック
 i) 初稿が出来上がると、それを社内のチェック者にチェック依頼をします。
 ii) チェック者のチェック時間が確保できる日時を気にして自分なりに「自分〆切日」を設定して依頼するようにしていますが、なかなか・・・チェック者の方いつもすみません。

 g) 手戻し
 i) チェック者がチェックし、文字数オーバーしているものを読者の目で観て意味が分かるように、また取材先様が伝えたいこと、今回の私の取材の目的(トピック的なものは編集から事前に「こういう特徴がある事業者さんです」といったものが送られてきます)などを勘案し概ね規定文字数に揃えてくれます(それでも無理な場合は編集にお任せします)。
 ii) 戻ってきた第二稿を執筆者の目で読んで、私の意図から外れていた場合ほんのちょっと修正します。

 h) 校正依頼
 i) 締め切り日はできるだけ間に合うようにメールで送ります。但し、取材先とのスケジュール調整が不調でギリギリの場合があります(締め切り日の前日が取材日だったこともありました)。そういう場合は(締め切りは比較的余裕をもって組んであるようですので)、当社の社内プロセスを伝え、締め切りを延期してもらいます。

 i) 校正原稿ゲラ受け取り
 i) 校正が終わると「ゲラ」という状態で送り返されてきます。イメージはほぼ新聞に掲載される形で、最上段の日付や広告スペース、「発想の転換コーナー」は一面全体の6~7割の記事スペースですが、その他の記事も入りますのでその部分がマスクされた状態です。
 ii) 校正原稿ゲラを確認し、OKでしたらその旨返信します。
 j) 新聞の形になって送られてくる。

さて、実はここまでの工程においても、取材先様への取材中のd)における取材スタイルにおいても(ここまでの工程については手前みそではありますが)「強み」があります。

私の取材~新聞掲載においてもっとも重視するポイントは、(「d)」は当然として)「f)」のチェックです。
    
2) 品質は工程でつくりこむ
製造業の世界では「品質は工程でつくりこむ」という言葉があります。
仕事全体を一つの大きなPDCAサイクルと考えた場合、取材という仕事は「P」取材先の選定、事前準備⇒「D」取材・初稿執筆⇒「C」社内チェック・編集チェック(校正)・校正ゲラチェック⇒(発行)⇒「A」振り返り、となりますが、実は各々の「P」「D」「C」「A」の中にも「小さなPDCAサイクル」が入っています。

例えば「D」の取材・初稿執筆の中のPDCAサイクルには
 a) 「小P」:取材先の業種、地域、取材先までの旅程、取材時間、取材内容の順番、事前調査での疑問点、必須の取材事項等についてノートに細かく書いておきます。また、必須項目についても漏れないよう書いておきます。
 b) 「小D」:取材はほぼファーストコンタクトですので、取材先様に気持ちよく話してもらうように心がけます。実はこの中にも「極小PDCAサイクルのP」が入ります。
 c) 「小C」:取材前のノートを見返して取材項目に漏れがないかチェックします。
 (これについては痛い思い出があります。写真を取り忘れて取材地を離れてしまい、慌てて30分車で引き返すという時間のムダと、取材先様の時間のムダを作ってしまいました)
 d) 「小A」:編集さんの手腕なのですが、毎回の記事は時々に応じて大括りで同じような構成であったとしても、微妙に違う場合があります。私なんかよりも大量の記事に目を通される編集さんがどういう意図をもってその構成にしているのかを類推しながら次の初稿執筆に生かします。
といった感じです。

3) 前工程は神様、後工程はお客様
製造業の世界では、「前工程は神様、後工程はお客様」という言葉があります。
調べてみると、「前工程は、後工程がつくれないものをつくるから神様」、「自分達の仕事を引き受けてくれる後工程は、お客様だ。お客様である“後工程”に喜んで頂ける製品やサービスを提供すること」だとされています。
私にとっての前工程は「取材先選定の編集さん」、後工程は「社内チェック者さん」ということになります。
(中にはいずれも鬼籍に入られましたが、井上ひさしさんや山田太一さんのように編集さんに「一語一句変えてはならない」と言われる方もいらっしゃったようですが、そのレベルは神のレベルで、私なんぞのペーペーの「紙」レベルでは思い切り「お客さまである『C』を担っていただく方に依拠して品質を少しでも上げる」ことで精一杯です)

長くなって申し訳ありませんが、ご紹介しておきます。

当社では業務マニュアルにおいて次のような一文があります。
「業務マニュアル第9版」
2.2.3. サービスの監視及び測定
当グループは、サービス要求事項が満たされていることを検証するため、サービス特性を監視し、測定する。監視及び測定は、個別サービス提供の計画にしたがって、サービス提供の適切な段階で実行する。
合否判定基準への適合の証拠を「記録管理規定」により維持する。記録には、サービスのリリースを許可する責任者を明記する。
個別サービス提供の段階で決めたことが問題なく完了するまでは、サービスのリリースおよびサービス提供を行ってはならない。ただし、業務全般を総括する専門家が承認したときはこの限りではない。(以下略)

4) 「C工程」(小C・極小Cを含む)チェックはリリース前の「配慮」ではなく、品質維持@のための工程
社内のマネジメントシステムで決まっているから、社内チェックなしに後工程「編集さんへ校正チェック」を依頼しないのではなく、一つひとつの工程で良し悪しの判断(自工程完結といいます)を行うこととなります。
当然、人間は組織(集団)においてコミュニケーションを取る際には各々が「自分の言質や行動は正しい」ものだとして行われます。
ですから、私が提供させていただいている「アンガーマネジメント」では「怒りは防衛反応」と定義づけられます。
そこには「決められたとおりにやったのに」という行為者の感情や、「(より良いものをリリースしたい、行為者の勘違いも含めて)せっかく見つけたのに」という検査者の感情がぶつかります。
だからといって、リリース前にチェックに提出するのは「決まっているから」とか「配慮」、「行為者の品質がそもそも粗悪であるから」では断じてありません。

5) まとめ(リリース)
今回はこのメルマガそのものを「工程」という体裁で執筆してみました。
みなさまの製品(サービス)実現の一助となれば幸いです。

今回もお読みいただきありがとうございました。

彌永

能登半島の大地震に羽田空港での飛行機衝突事故、なんだか不気味な2024年の年明けになっています。しかし一方で株価の方はバブル期以来の高値を付けているようで「待ちに待った好景気の到来か!」という様相です。ただ燃料費や原材料費などコストは高止まりし、また人手不足の懸念も続く中、コロナ禍を生き延びた中小企業にとってまだまだ気が抜けない2024年というところです。

さて岸田政権は、本来なら一昨年の参議院選挙で自民党が単独で改選過半数を得て以来、衆議院を解散しない限り2025年の参議院選挙まで国政選挙がないという「黄金の3年間」を手に入れたはずでした。

ところが政治の世界は「一寸先は闇」と言われますが、アベ政治に代表される強権的な政治に依拠してきた自民党が大揺れに揺れています。政治資金パーティーをめぐる告発があり、民主主義とは相いれない「政治とカネ」をめぐるコンプライアンス無視という政権党の驕りが明らかになっています。まさに自民党への信頼が地に落ちたと言ってもいい状況です。

そんな政権与党が強行したインボイスですが、これから始まる確定申告を1回、2回と経る中で、また6年間の経過措置が無くなる中で混乱はますます深まっていくと思われます。経理処理における負担の問題、とりわけ小規模事業者のところでは負担が大きく、課税業者を選択したところを含めて事業継続に関わる問題がより大きくなることは明らかです。

企業献金の見返りに大企業の負担を軽減し、インボイスの導入で名実ともに消費税中心の税制を確立して税収の安定化を狙うとともに、「非効率な」中小零細事業者を淘汰しようとする政府の思惑。自分たちは使途を問われないお金(裏金)を欲しがる一方で、インボイスのように徹底して金額と使途の証拠書類を求めることとの矛盾がますます深まっていくだろうと思われます。

国民生活をめぐっても、食料品や日用品、電気代にガソリン代など物価の高騰が続く一方で、給料の伸びが物価の上昇に届かない実質賃金の低下が言われる厳しい状況が続いています。労働組合が全般的に低迷する時代にあり、多くの国民もデモをすることはなく、選挙にも行かず、誰がやっても変わらないと半分あきらめ、くだんの政治家に白紙委任しながら、じっと我慢をしています。

新年のザラザラしたニュースは続きます。代執行という名のもと新年早々から沖縄県民の意向を踏みにじり、日本政府が辺野古基地建設をここまで強引に進める意味は何なんだろうと思います。仮に辺野古基地が完成したとしても世界一危険といわれる普天間基地が無くなるという確約は取れていません。こうした卑屈ともいえるアメリカへの「忖度政治」を見ていると、もはや「51番目の州」以下の「占領下にある国」と言っても過言ではないという気すらします。しかも海底にある超軟弱地盤に杭を何万本も打ち込む過去に例がない工事です。この辺野古基地建設が本当に完成できると確信もって言える人が居ない中で、いったいどれだけのムダ金(税金)が海中に投じられるのでしょう。

能登半島の地震で被災者救援真っ最中の1月7日、自衛隊はアメリカはじめ8カ国の空挺部隊による「降下訓練始め」を中止することをしませんでした。ニュースを見ると訓練始めに参加したのは自衛隊約260人、多国籍部隊約60人。訓練は他国の侵攻を受けた離島を奪還するという想定。自衛隊の第1空挺団が落下傘で降下し、他国の部隊は強風のため大型ヘリで演習場に移動し、共同で奪還作戦にあたったそうです。能登半島地震というこの非常時に大型ヘリを使い、日本以外の7か国からわずか60人という規模の訓練でも中止しなかったわけで、果たしてそこに参加する自衛隊員の思いはどんなものだったのだろうと心が痛みます。

更に更に、完全に破綻している大阪万博への投資継続、といっても真の狙いとして万博後に建設されるカジノのインフラ整備というものが見え隠れしています。そこにも多額の税金が投じられるというもので、いったい日本はどれだけ裕福な国なのでしょう。

少なくとも日本はまだ中国やロシアのように国民の声を力づくで押さえつける専制主義ではなく、曲がりなりにも「民主主義」の国なのだから、欧米の若者を中心にしたデモやストライキのように、日本でもそろそろ国民がもっと声をあげていいのではないかという気がします。今年は国会解散の可能性は低いかも知れませんが、せめて国政選挙の投票率が台湾並みに7割8割となり、30代以下の投票率が過半数になることを期待し、未来に希望を持ちたいですね。

今回もお読みいただき、ありがとうございました。
(吉村)

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