国内の陽性者数は過去最高を更新し、第三波が言われています。こうしたコロナ禍の新しい日常を象徴するものは何といってもマスクでしょう。今では仕事で出会う人はもちろん、街中を歩く人たちもほぼ全ての人がマスク姿です。これまでは花粉症の季節の風物詩と思われていたマスク、以前は黒いマスクをしている人を見ると、何となく不気味な感じを受けていたマスク、今ではそれも違和感なく視界に入ってくる日常風景の一コマになりました。
なんだかバタバタとしていた2020年でしたが、今年も流行語大賞の季節となり、その発表は来週12月1日ということです。もちろん数百億円もの税金の無駄遣いと言われた「アベノマスク」もしっかりノミネートされています。
安倍首相が率先してデモンストレーションしたアベノマスクの「ウリ」は、何度も洗って使える「布マスク」というものでした。そうした「経済性」が重視されるのも、確かに長期化するコロナ禍におけるマスクの商品価値の一つでした。しかしコロナ禍で優先的に重視される価値は何と言ってもまず「機能性」のはずです。それがなぜ「給食マスク」と揶揄されるような、あの前時代的なサイズになってしまったのか、今もって私の中では謎です。
さて今回の本題はアベノマスクではありません。コロナ禍で新しい風景として定着したマスクに関わるビジネスについてです。新型コロナウイルスのパンデミックで、マスクを求めるニーズは一気に世界的なパニック状態を引き起こしました。テレビを見れば、世界地図にびっちりと満遍なく感染者数が表示されるニュースに、こんなにも地球は小さかったのかと、改めて驚きました。
4月から5月、ゴールデンウィークを前後して、一時は使い捨てのサージカルマスクが中国から輸入できなくなったことで、1枚50円から100円もする「高級ではない高額マスク」が普通に売られて、それでも品薄という異常な風景が見られました。
それも今ではようやく平常価格に戻りましたが、一方で高級ブランド、スワロフスキーの1枚10万円というファッションマスクが売れたという話題もありました。そうすると1,000円台のスワロフスキーマスクは即完売ということです。手作りマスクはちょっとしたブームになっていて、会見する政治家やコメンテーター、もちろん街中でも様々な個性あふれるデザインのマスクが見受けられるようになりました。
要するに今ではマスクに対する人々のニーズは、コロナ菌対策という基本的な機能性とともに、付け心地やファッション性という付随的な価値が一年前には考えられなかったほどに高くなっているのです。そしてマスクが日常風景になることで、当然のことながら生活の周辺に様々なグッズが現れて来ました。マスクケースにマスク置き、また除菌シートに除菌スプレーも多種多様な商品が巷にあふれています。
顔の周りは特に顕著で、サングラスも濃い色は人相的に?マスクに合わないから薄い色に、またフレームも飛沫対策で大きめが人気だとか・・・更にはマスクと「平和的に共存する」イヤホンやピアスが競って追求される時代をいったい誰が想像したでしょう。一方で化粧品の売上は落ち込んでいるとか・・・
そうは言っても私たちは商魂たくましくして、落ち込んでなんかいられません。どんなに厳しい環境変化であっても、人々の価値観やニーズの変化にアンテナを張り、わずかに輝くビジネスチャンスをとらえる観察力が必要なのかもしれません。新しい日常風景と“しなやか”に共存する“したたかさ”が求められる時代にあることを、まだまだ長引きそうなコロナ禍で改めて思う今日この頃です。